テロが相次ぐイラクで、日本人3人が拘束された。3人の拘束を知ったのは、昨夜の「中日×巨人」のナイターの途中だった。速報が流れたのだ。最初はどんな人が、どんな状況で誰が拘束されたのかははっきりしていなかった。そのため、わたしは、政府の「邦人保護」を最優先にすべきと思った。しかし、その後、拘束された日本人の名前が明らかになった。2人はジャーナリスト(うち、ひとりは「週刊朝日」の契約カメラマン、ひとりは、高校卒業したてのフリーライターを名乗っている)。もう一人は、NGOのメンバーだった。

 わたしは、拘束された人物の身分を聞いて、複雑な思いを抱いた。たしかに、国家としては、「邦人保護」は仕事であるし、最優先させるべきだろう。しかしながら、ジャーナリズムはある意味、反権力であるべきものだ。そのジャーナリストが、このような状況とはいえ、国家に「命乞い」をするかのような立場をしてよいのか。この二つの考えが頭のなかで揺れている。

 イラクで米軍が軍事行動をとり、その米軍を日本が支援している。その状況で、テロリストや抵抗運動をしている人たちは、そのターゲットとして、日本が含まれた。このような情勢のなかで、よりターゲットにされやすいのは、ソフトターゲット(民間人)だろうというのは、予想がつく。しかも、イラクに日本人がいるとすれば、ジャーナリストやNGOメンバーになるだろう。つまり、ターゲットになるかもしれない可能性が高い場所に、あえて3人は出向いた。ジャーナリストの使命感もあっただろうし、NGOとしても信念も持ち合わせていることだろう。そして当然、ターゲットになる覚悟もあったはずだ。なければ、逆に、この情勢下で、イラクに出向くことは間違っている。

 あるジャーナリストがメールマガジンで、3人を保護するために、自衛隊を撤退するべきと主張していた。わたしも自衛隊派遣に納得がいっているわけではない。しかしながら、今回の問題と、自衛隊派遣の是非を同一的な問題として扱うべきではない。政府の政策転換があろうが、なかろうが、特にジャーナリストは、ある程度の覚悟はもって、現地取材するべきだと思う。その意味では、そもそも現地取材をすることは、死と隣り合わせなのだ。

 繰り替えすが、国家としては、どんな身分のひとであれ、「邦人保護」が最優先させるべきだ。しかしながら、ジャーナリズムの側が、国家に「命乞い」をし、「救助」を積極的に求めていいのだろうか。ジャーナリズムをどのように考えるかによって、その答えは変わってくるだろう。わたしは、権力とは一定の距離をとり、姿勢としては「反権力」であるべきだと思う。とくに、戦争取材のときには、それが明確になるべきだ。ジャーナリストやフリーライターを名乗るのなら、国家に「命乞い」をするべきではないと考えている。


 外務省はイラク全土を対象に、避難勧告を出している。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/prtc/prtc030414.html
 以下のURLでは、テレビで放映されている以上に、テロリストの過激な行動が流れています。
http://www.euronews.net/create_html.php?page=accueil_info&lng=1&option=0,home

 フリーライターの男性が代表を務める「NO!小型核兵器(DU)サッポロ・プロジェクト」のサイト
 http://members.jcom.home.ne.jp/no_du_sapporo/
 拘束された女性が所属するNGOのサイト
 http://www.clubwee.com/