メディアにおける公共性とは。

 ライブドアニッポン放送買収に関して、公共性だとか、倫理観だとかの言葉が飛び交っている。
 私は、ライブドアのメディア買収について、ジャーナリズムへの尊敬が薄い意味では、賛成しがたい面がある。しかし、メディアのエンターテイメント性をも考えれば、賛成の余地もある、と考えている。
 この買収劇に関連して、フジテレビやニッポン放送の防衛策のひとつとして、「放送事業者の高い倫理観や価値観」、あるいは公共性などの言葉を繰り返し、発している。
 たしかに、「放送事業者の高い倫理観や価値観」、あるいは公共性などは、求められる必要性があるでしょう。政治家の発言でも見られるように、電波は法律によって許可されるものです。しかし、考えてみればわかるように、テレビ業界は、「放送事業者の高い倫理観や価値観」、あるいは公共性よりも、視聴率を優先してきたし、そうせざるをえない構造にあります。
 エンターテイメントを優先的に考えれば、やはり視聴率を考えることはいうまでもない。しかし、ジャーナリズムを考えれば、視聴率ではなく、「放送事業者の高い倫理観や価値観」、あるいは公共性を優先する。テレビはこうした矛盾を内包するメディア特性を持っているのではないでしょうか。
 そう考えるとき、ライブドアが、少なくともエンターテイメント部門に参入することは合理的な気がします。しかし、ジャーナリズムは消滅するかもしれない。いや、エンターテイメントとしてのジャーナリズムは継続するのかもしれない。

FNSの27社、フジとニッポン放送全面支援を表明

 関西テレビ東海テレビなど全国のフジテレビ系列局で構成する「FNS(フジ・ネットワーク・システム)」の27社は18日、フジテレビとニッポン放送の全面的な支持を表明する声明文を発表した。
 声明文によると、ライブドアニッポン放送の株を大量取得したことについて、「法の不備をついた強引な手法であり、強い憤りを覚える」と強く批判。さらに、「放送事業者の高い倫理観と価値観が、放送事業の公共性を支えるものであり、ライブドアの一連の言動に接するとき、そのような高い倫理と価値観が保有されているかは甚だ疑問」と指摘した上で、「ニッポン放送が同社の支配下に置かれることは、極めて重大な問題がある」と強調している。
 一方、フジテレビ労働組合(工藤晃義・執行委員長)も18日、ライブドアフジサンケイグループへの経営参入について強く反対するとの声明を、同日付の組合ニュースで発表した。
 それによると、同労組はライブドアの経営参入に対して、「断固反対」を表明。その理由として、「ライブドアの実態は金融会社であり、M&Aを生業としているような会社。他社より優れたIT技術はなく、独創的なアイデアもない。そんな会社と組んでもメリットがないどころか、悪影響の方が大きい」としている。
?(2005/3/18/21:50 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/culture/news/20050318i414.htm

フジ労組執行部見解の要旨
 フジテレビ労働組合の執行部見解は以下の通り。

 従業員のみなさん、ライブドア支配下で働けますか。組合執行部はライブドアの経営参入に反対する。
 ライブドアニッポン放送株式取得に対し、フジテレビは対抗策を打ち出しているが、組合執行部としては「従業員の労働条件と職場環境」を守る立場から会社側の姿勢に賛同する。
 堀江貴文ライブドア社長は、企業は株主と経営者のみで存在しているかのように語っているが、フジテレビの現在の業績は、株主はもちろん、経営者と従業員がともに築き上げてきた。
 株式公開買い付け(TOB)期間中に一般株主にも当社にも事前説明なく、突然株を大量購入し、『筆頭株主になったから業務提携をしろ、無視するのはおかしい』と一方的だ。礼儀を欠いているのは明らかだ。
 フジテレビは労使間の確認のもと、多様なデジタル産業・情報技術(IT)企業の研究を行い、設立、投資などの試みを経営戦略として実施している。IT関連事業への参入や計画を怠っているかのような堀江社長の発言は、フジテレビの事業戦略に対する理解が甘いとしか思えない。
 フジテレビの番組・放送は、全従業員の『心』なくしては作り出せない。『心』を無視して強引に経営参入しようとしている者には断固として『NO!』を出していきたい。
(2005年2月22日??読売新聞??無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20050222mh10.htm