警察庁は、昨年の「ネット心中」発生件数を発表しました。
 http://d.hatena.ne.jp/hatesbtetuya/20051222
 ↑でも、過去3年間の発生件数を取り上げました。それによると、件数、死者ともに約3倍の急増しているという。男性も多いが、女性も4割を占める。年齢別でも、比較的インターネットをプライベートで利用する若者世代が多いが、40代が9人と、深刻さを示している。

 こうした「急増」の発表は、まず、警察の認知件数だということを指摘しておきます。少年犯罪をはじめ、出会い系サイト関連事件、インターネット関連犯罪は、ある事件がカテゴライズされて初めて「件数」となるのです。つまり、ある事件が起きた、というだけでは、たとえば、その犯人の年齢や、その手段に出会い系サイトが使われたのか、自殺系サイトが使われたのか、などは必ずしも発生当初に分かるわけでもない。ある段階(たとえば、検挙のとき、あるいは、その供述の中で)わかるのです。

 急増している「感覚」はたしかに私もあります。2003年、埼玉県入間市で起きた男女3人によるネット心中を契機に、そうした手段が世間に露呈しました。そのため、ネット心中を目的としたサイトもあったり、自殺系サイトの中でも、ネット心中目的のも増えました。しかし、それが「暗」の部分=ネット心中の成功、だけを示したわけではない。そうしたサイトを作ったり、書き込むことでなんとか生きることができた人たちも多いのです。

 最近では、自殺系サイトをはじめとする「有害情報を規制しよう」という動きもあります。表面的に見れば、たとえば、自殺系サイトがなくなれば、そうしたサイトを使った「ネット心中」はなくなるでしょう。しかし、出会い系サイトで募集している人もすでいますし、個人のブログでも呼びかけている人もいます。いわゆる「有害情報」だけを消しても、他の手段が出てきてしまいます。さらに、そうしたサイトに書き込むことでなんとか生きて来られた人たちの行き場を失います。

 急増の背景に何があるのか。単にネットの普及、有害サイトの存在だけに目を配ってはいけません。現実にある「生きづらさ」が問題なのですから。

 昨年のネット自殺91人 2年前の3倍、20代最多

 昨年1年間に、インターネットのサイトで知り合い一緒に自殺する「ネット自殺」は全国で34件(前年比15件増)発生し、91人(同36人増)が死亡したことが9日、警察庁のまとめで分かった。
 同庁が統計を取り始めた2003年(12件で34人が死亡)と比べ件数、死者数ともに約3倍に急増している。  まとめによると、死者は男性54人、女性37人。年齢別では20代が38人で最も多く、30代が33人、40代が9人、10代が8人などの順。
 昨年2月には神奈川県三浦市の農道に駐車したワゴン車の中で男性3人、女性3人が練炭集団自殺するなど、同年1−3月に20件(死者54人)が集中した。
共同通信) - 2月9日11時26分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060209-00000084-kyodo-soci