オタク女子研究

オタク女子研究 腐女子思想大系

オタク女子研究 腐女子思想大系

杉浦由美子





 「モテない男」研究や「モテない男」論、男のオタク研究の本はこれまでいくつかあり、なぜ、「モテない女」やオタク女子研究がなかったのか。やっと出ました。



 なぜ、オタク女子がオタク男子と比べて目立たないのか。それは、隠す傾向になることがあるらしい。また、オタク男子は外見で判断できるが、オタク女子は身だしなみを気にする。そのため、目立たないのだという。たしかに、私が知っているオタク女子たちも見た目が「ふつー」です。



 オタク男子との恋愛比較もしています。オタク男子は「萌え」に目が向けられると、現実の恋愛からは遠ざかる。彼女ができると、オタクではないらしいと(p43、ちょっと違う気もするが・・・)。しかし、オタク女子は「萌え」と恋愛は「別腹」だという。どっちかを選ばないといけないわけではない。



 その「萌え」対象も、オタク男子はアイドル(3次元)やアニメ・漫画(2次元)であるが、小説(1次元)はその対象外のようだ。ただ、アイドルではなく、現実の身近な女性に対しては毛嫌いする傾向がある。一方、オタク女子は、1次元も対象になってしまい、いまでも対象としては元気のようだ(p110)。



 また、負け犬女と、腐女子は違うという。負け犬女は恋愛至上主義の中で「敗北」。しかし、腐女子恋愛至上主義ではない。そして、恋愛至上主義はヤンキー文化だと言い切っている。



 そうしたオタク女子の生き方は、ストレス社会を生き抜く知恵だというのだ。



 管理社会の中でストレスが溜まっているのは十代だけではありません。三〇歳くらいの社会人だってすごくストレスがたまっている。しかし、毎日働かないと家賃が払えない。そういう時に、男性同士の恋愛という「ありえない」異次元を、感情移入することなく読む。頭を空っぽにして漫画や小説の世界に没頭することによって、つかのまの休息を取ることができる。そして現実に向き合える。(p215)



 現実に向き合うための、一時的な逃避行動をしているのがオタク女子だというのだ。



 きちんと生きていくために健康的に現実逃避すること。窓ガラスを割っても世界が変わるわけではない。そんな小手先の反抗で外界や自分を傷つけることよりも、もっと賢く生きていくコツをキチンと取得しているのが腐女子なんじゃないかと思うのです。(p216)



 そして、萌えと恋愛は「別腹」ではあるが、けっして、無駄な努力をしない。結婚できないのは男のせいだと嘆く負け犬女の発想とは違って、「結婚できないのは腐女子だから!?でも、腐女子でも結婚しtげいる人はいっぱいいるじゃん。じゃあ、腐女子以外にも私のどっかに問題があるのだわ・・・」と自省モードに入る(p197)だというのだ。



 ちょっと、オタク男子のオタク論や恋愛論よりも、理論的ではないのが残念。まあ、エッセイとしては面白いか。