最終報告

 警視庁の私的研究会「バーチャル社会の弊害から子どもを守る研究会」の最終報告がまとまりました。



  警察庁の私的研究会で有識者で構成する「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」は25日、性や暴力に関する情報の氾濫や、ゲームやインターネットが与える弊害と改善策を盛り込んだ最終報告書をとりまとめた。

 同研究会は、2006年4月に設置。以降、月1回程度の割合で開催されてきた。最終報告書では、携帯電話やゲーム、18歳未満の「子供」を性行為の対象とするコミックの弊害や対策など、これまで議論されてきた内容が盛り込まれている。

 子供を性行為の対象とするコミックの弊害では、インターネット販売を新たな課題としに挙げ、大手の書籍販売サイトで同コミックが販売されていることを指摘。大手書籍販売サイトのアダルトコミックの販売状況をもとに調査したところ、約9,000件の3割は、表紙などから子供を性行為の対象とするコミックであることが推測されたという。また、小学生以下を対象としたものは5%と推測されている。

 同研究会では、こうしたコミックがインターネット販売されるようになることで、1)年齢確認が自主申告であったり、年齢確認が不要な販売サイトも存在するため、18歳未満でも容易に入手できる、2)コンビニ決済が可能なため、クレジットカードがなくても購入できる、3)書店で有害図書指定されて販売されているコミックでも入手できるため、有害図書指定という条例が形骸化する??ことなどが懸念されるとしている。

 これらの状況に対する取り組みの強化としては、社会全体が危機感を持って認識を共有した上で、子供を性行為の対象とするコミックが社会に与える悪影響を調査すべきであると指摘。さらに、業界団体は、自主審査に取り組むとともに、書籍販売サイトに対しては、子供の年齢確認に十分な保障がなされない現状では、子供を性行為の対象とするコミックをWebサイト上から削除すべきであると呼びかけた。



 http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/12/26/14369.html





 最終報告は、先の中間報告でのケータイ電話対策に加え、ゲーム・アニメ・コミックなどについても対策を述べています。しかし、突っ込みどころがいくつかあります。



 ゲームの弊害については、危険性や事件にむすびつくことは述べていますが、それがどのような確率で起きるのか、また事件の加害少年が供述した内容、家庭裁判所の決定が正当性があるのかについては検証されていません。ただ、少なからずの懸念があることは事実ですが、現在は、レーディング制度を導入していることで、自主規制はされています。また、指導をすべきというが、ゲームの危険性を前提にした指導はどうなのか。また指導する者がゲームを理解できるのかも疑問です。



 子どもを性行為等の対象とするコミック等についてですが、これもやはり、そうしたコミックが事件を誘発した例をあげています。しかし、コミックが直接的に影響したのかどうか。もともと欲求があり、コミックがヒントになっただけだとしたら、どのようにすべきか、等の検証は不十分です。

 また、タイトルのなかで「少女」「学園」の文言があったり、教室等の描写があることから、子どもを性行為の対象にしたコミック等と判断し、ランドセルが描写されていることが小学生以下を対象にしているコミック等と判断していることから、スト−リーではなく、絵そのものを検証の対象にしているようです。

 こうしたコミック等の販売と、事件との因果関係はまだ研究されていません。そのため、専門的な検討を進めるべき、と述べています。



 しかし、弊害を前提とすることから、これらの利便性や有効的な効果についてはほとんど述べられていない。社会政策として問題にするのなら、弊害と有効的な効果について多面的な視点から考え、それのバランスを考慮することが求められるでしょう。政策を実現する上での費用対効果について考えられるべきではないでしょうか。