クスリ漬けの精神医療・・・・

 某雑誌に「クスリ漬けの精神医療」について執筆しようとしたところ、こんなニュースが。



 毎日新聞は数年前にも同じような問題を追いかけていましたね。



 リタリンに限らず、どの医者がどんなクスリを出してくれるのか、といった情報はネットの普及で広まっています。「クスリ漬け」の精神医療に、薬物依存患者や大量服薬をしたい人たちが集まってくる。そういった、ある意味での「共犯関係」がなぜできるのか。



 どこでも聞く話ですが、精神科の診療報酬の問題でしょうね。話を聞くだけでは「保険点数」にならず、経営を成り立たせるためには患者を多く見なければならない。そのために3分診療といった現状がある。そして、クスリを多く出すことで「点数」を稼ぐ。善意の精神医療でもそうした現状ですが、悪意があると、クスリを出す際に、わざわざ依存性の高いクスリを初診から出してしまうこともある。



 さて、その現状をどう書くべきか。いろんな話があるとは思います。これまで取材してきた例だけでも悲惨な現状はあります。お話を聞かせていただける人がいたら連絡ください。











リタリン:東京・新宿の医院、ずさん診療 初診3分、すぐ処方−−通院歴見ただけで

 ◇歌舞伎町のビル、若者途切れず

 東京都と新宿区保健所が18日、医療法違反(不適切な診療)の疑いで立ち入り検査に踏み切った東京クリニック(東京都新宿区)は依存性の高い向精神薬リタリン」をわずか数分の診察で処方し、インターネットでも利用者に「人気」のクリニックだった。患者らの証言からずさんな診療の実態が浮かび上がる。【精神医療取材班】

 ◇検索トップに表示 院長応援サイトまで

 15日夜、日本最大の歓楽街、新宿・歌舞伎町。酔客や観光客を横目に、利用者が東京クリニックのある雑居ビルに次々と入っていく。その多くは10〜20代の若者たちだ。10分ほどで出てきた利用者は、処方せんを片手に、近くの調剤薬局に向かう。受け付け終了の午後8時近くになっても、患者が途切れることはなかった。

 中野区の男性会社員(35)は7年前からリタリンを服用して依存症になり、さらに薬の量を増やそうとインターネットで医療機関を探した。「リタリン」と打ち込んで検索すると、トップに「東京クリニック」の名前が表示された。ネットにはリタリンをすぐに出してくれる院長の「応援サイト」まで作られていた。

 男性は05年8月、初めて訪れた。医師は初診にもかかわらず、診察前に男性が通院歴などを書いた紙に目を通した後、「分かりました」とだけ言い、診察室を後にした。その間、わずか2〜3分。処方せんを受け取ると、リタリンが1日6錠、2週間分出ていた。男性は「こんなに簡単にもらえるなんて驚いた」と言う。

 服用量は1日20錠に増えた。男性が予約日を待ちきれず、数日前に行っても、スタッフらは理由も聞かずにすぐに処方してくれたという。

 休職中の男性は今も東京クリニックに通院している。診察は受けず、薬だけをもらう。自費診療のため、薬代は月5万円。男性は「手元に薬がないと不安になる。行かないようにと思っているが、こんな病院があるから、どうしても行ってしまう」と打ち明ける。

 杉並区の女性(29)は今年3月、東京クリニックを訪れた。診察室に入ると、医師は症状も聞かずに「病名は何か」と尋ね、紙に木の絵を書かせた。絵を見た別のスタッフが「あなたは落ち込んでいる。うつ症状のようなものがある」と分析した。

 診察時間は約1分。医師は診察室のパソコンの画面を見つめたまま患者と視線を合わせることもなく、リタリンを含む5種類の薬を処方した。女性は「あまりに簡単に薬が出るので怖くなった。脳や心のことが、こんな診療で分かるはずがない」と振り返る。

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 ■解説

 ◇医師の聖域に踏み込む

 東京都と新宿区保健所が、薬に関する医師の処方権に踏み込んで医療機関を立ち入り検査するという異例の対応をとった背景には、東京クリニックと同様、不適切な医療行為をしている疑いのある医療機関に、警鐘を鳴らす意味が込められている。

 薬の処方は、医師法により、医師の裁量に任せられている。とりわけ精神医療の分野では、医師による薬の処方が治療の大部分を占める。これまで、行政機関が聖域ともいえる「医師の処方権」に踏み込むのは「考えられないこと」(新宿区保健所幹部)だった。

 しかし今回は、リタリンの処方について同クリニックに明らかに問題があると行政側が認定した。同区保健所が繰り返し行政指導しても、医療内容が改善されることはなく、「これ以上放置すると、逆に行政の責任が問われかねない」(都幹部)との判断があった。

 業界関係者によると、抗うつ剤の市場は06年度で875億円で、5年前の2倍に増加。精神科クリニックも乱立している。医療関係者は「政府が年間3万人を超える自殺者を減らすため、うつ病の治療や予防の対策に乗り出し、抗うつ剤が使われやすい環境の中で、安易に処方されるケースが目立つ」と指摘する。実際、リタリンを不適切に処方する医療機関は相当数に上るとみられる。

 国や医療機関は、今回の立ち入り検査の意味を真剣に受け止める必要がある。

毎日新聞 2007年9月18日 東京夕刊

 http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070918dde041040056000c.html