「ネット心中」を自殺ほう助で書類送検する方針という記事が飛び込んできた。もし、書類送検されれば、〇三年に山梨県内で起きた「ネット心中」での4人が対象になって以来だ。
 記事によると、狙いは2つある。ひとつは、「2人が女子生徒の自殺を手助けした責任は重大」としたこと。つまり、このケースでは「ネット心中」での最年少である中学生が含まれていたため、意思決定の「弱い」中学生の後押しをしたと考えられたのだろう。自殺そのものあは刑法上の罪ではないが、自殺ほう助は罪だ。本来は、山梨ケースのように関わった全員を書類送検するのは理論的にはわかりやすい。しかし、今回はその中に中学生がいたことで、あえて大人の責任を問いたいのだろう。
 もうひとつの狙いは、「ネット心中に警鐘を鳴らす意図」だという。たしかに、ネット心中が犯罪的要素があると啓蒙する点では一定の効果はあるかもしれない。しかし、本気で実行しようとするものにとっては、亡くなった後に書類送検されることになっても、実行を躊躇することにはならない。
 こうした刑事政策上の「ネット心中」対策は、多少の効果があるのは認めよう。しかし、本当に死にたいと感じたときには、「ネット心中」にこだわらない。なぜなら、方法のひとつにすぎないからだ。昨年末には高校生2人による飛び降り自殺、春が過ぎ、暖かくなってきて、沖縄で3人の首つりによる集団自殺があった。ネット心中の方法も、練炭自殺だけでなくなってきていいる。
 ひとつのことを封じ込めても、他の方法が顔を出すだけなのだろう。全般的な自殺対策や、多いと思われる鬱対策などが放置されている中での、こうした警察の動きは、かえって当事者たちが「死にたい」と訴えられる場所をなくしていくだけになるのではないか。

14歳含むネット心中、ほう助容疑で死者を書類送検

 栃木県二宮町で今年2月、神奈川県秦野市の中学2年女子生徒(当時14歳)を含む男女3人が集団自殺した事件で、栃木県警捜査1課と真岡署は、自殺した福岡県生まれの男性会社員(同41歳)と北海道深川市、短大1年男子学生(同19歳)の2人を自殺ほう助の疑いで今月中に書類送検する方針を固めた。
 警察庁によると、集団自殺事件で死者を書類送検するのは異例だ。インターネットを介在した集団自殺の死者で、女子生徒は最年少。栃木県警は、2人が女子生徒の自殺を手助けした責任は重大と判断するとともに、ネット心中に警鐘を鳴らす意図があるとみられる。
 調べでは、3人は3月1日朝、二宮町の鬼怒川河川敷に止めた乗用車内で遺体となって見つかった。窓は目張りされ、練炭の燃え殻が残っていた。死因は一酸化炭素中毒だった。
 県警は3人のパソコンを押収し、知人からも事情を聞いた。その結果、3人は、女子生徒がインターネットの掲示板に「一緒に死んでくれる人を探しています」と呼びかけたのがきっかけで知り合い、男性2人が乗用車を用意したり、練炭を購入したりしていたことがわかった。
 警察庁によると、インターネットを介在した集団自殺は今年1〜4月に22件発生し、59人が死亡。過去最多だった昨年1年間(19件、55人死亡)をすでに上回っている。
(2005年6月1日3時14分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050601ic02.htm