集団自殺図った学生に有罪 裁判官「命の重さ覚えて」

 インターネットで知り合った男性3人が今年3月、富山市集団自殺を図り1人が死亡した事件で、生き残って自殺ほう助罪に問われた東京都西東京市の男子大学生(21)に対し、富山地裁(手崎政人裁判官)は13日、懲役2年、執行猶予3年(求刑懲役2年)の判決を言い渡した。
 判決理由で手崎裁判官は、「しちりんや練炭を準備して積極的に関与した」と指摘した上で、大学生は反省し、母親も今後の指導監督を誓っているとした。また「人の命の重さは他人でも自分でも変わらない。命の重さをよく覚えていてほしい」と語りかけた。
 手崎裁判官は6日の公判でも大学生に「パソコンだけと向き合わない方がいい」と諭していた。
共同通信) - 6月13日11時49分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050613-00000055-kyodo-soci

漠然とした不安
ネット会話で加速、自殺に

 漠然とした不安を持っているだけの人でも、インターネットでやりとりすることで自殺への思いが強まり、実際に自殺を図った事例があることが十一日、厚生労働省の「ネット自殺に関する研究班」の調査で分かった。ネット上で交わされる会話は口調や表情が分からず、受け手がメッセージを過大に解釈する傾向があるためという。研究班は、関連サイト運営者への指導や処罰の検討などを提言している。 
 研究班は上田茂国立精神・神経センター精神保健研究所長を主任とする専門家グループ。二〇〇〇年十一月から今年二月までの四十例のネット自殺を中心に、自殺者の元精神科主治医などから得た情報を分析した。
 分析では、ネット自殺に集まる人は「一人で死ぬのは寂しい」と仲間を募って他人を巻き込むタイプと、「楽に死ねるなら私も加えて」と追随するタイプに分かれた。
 前者には多重人格や、いじめなど心的外傷体験により極端な性格の偏りを示す人格障害うつ病が見られた人もあった。後者はうつ病うつ状態の人がいた。
 一方で、両タイプには精神障害がない人もあるが、思春期や進路が決められず悩む状態などでみられる閉塞(へいそく)感や、先行きの不透明感を持っていた。
 ある男子大学生(22)は「あと四十年間、毎日同じ生活をするのは苦しい」とネットで呼びかけ、別の男性が「死にたい理由が特にあるわけでもないが、がんばるのが面倒だから死のう」と呼応した。当初は積極的に死を選ぶ理由が見受けられないのに、ネット上で会話を交わすうちに意識が高まり実際に自殺を図った事例で、二人は男女計四人で車中の練炭を燃やしたが未遂に終わった。
 ネットでは、ほしい情報だけを選んで進める利便性がある。だが、研究班は「地域を越えて簡単に人と出会え、自殺手段も容易に得られる」と危険性を指摘。実際に集まると「途中で気が変わっても、集団の圧力により抜け出しにくくなる」としている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20050612/mng_____sya_____010.shtml

ネット自殺 連鎖断てるか
『情報開示』『取り締まり』に賛否

 インターネットの自殺サイトを通じた集団自殺が増えている。今年一月から四月までに、全国で二十二件、五十九人に達し、早くも昨年一年間の十九件、五十五人を超えた。自殺予告があった時などに、警察が差し押さえ令状なしに、プロバイダー(接続業者)に情報開示を求められる新たなルール作りの提言など、防止への動きも出てきたが、自殺の連鎖を断ち切ることはできるのだろうか。遺族や元自殺志願者らの思いを聞いた。

 ▼履歴で行き先

 「息子が一緒に自殺してくれる人をネットで募ったのは、家を出る三日前。その間に分かっていれば、思いとどまらせることもできたと思う」
 埼玉県の定時制高校三年の男性(20)は、今年四月、同県秩父市で、練炭を燃やした車内で男女二人とともに遺体で見つかった。父親(56)は情報があれば、長男の命は救えたと考えている。
 「自殺予告」は犯罪ではない。このため、警察が照会しても、「通信の秘密」を理由に、プロバイダーが情報を伝えなければ打つ手はなかった。情報開示が進めば救える命が増えるのか。
 「家を出た後、パソコンの履歴を調べて行き先が分かった。警察が現地で待っていれば確保することもできた」。父親は、情報開示と家族や警察の素早い行動が連動すれば、ネット自殺に対応できるとの見方を示す。

 ▼板挟み

 「これから死ぬ」という予告があった場合、一九九八年に作られた業界のガイドラインでは「緊急避難」として、警察の照会に対応することにしていた。しかし、令状の提示を求めるプロバイダーもあった。警察庁有識者会議は先月、自殺の呼び掛けなどがあった場合、プロバイダーが契約者の氏名、住所などを警察に開示することを提言。これを受け業界団体テレコムサービス協会(加盟社約三百十社)は新ガイドラインの作成を進める。
 しかし、業界には慎重姿勢が残る。「通信の秘密や表現の自由に抵触する可能性がある上、書き込みがいたずらではないという判断は至難の業。一方で、人命にかかわる問題でもあり、板挟みになっている」。同協会の桑子博行サービス倫理委員長は、そう説明。「令状がなくても、警察は通報状況などをできるだけ具体的に書面で説明してほしい」と求める。

 ▼ほう助摘発

 集団自殺を罪に問う動きもある。男性三人で自殺を図り、生き残った無職の男性(22)に対し、富山地裁は八日、自殺ほう助罪で執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。
 栃木県警は女子中学生と一緒に自殺した四十歳と十九歳の男性を近く自殺ほう助容疑で書類送検する。被疑者死亡のままの送検は異例だが、年長者は女子生徒の自殺を踏みとどまらせる立場にあったことを明確にし、警鐘を鳴らす狙いだ。
 しかし、自殺掲示板を運営している三十代の男性は「考えが甘すぎる」と指摘する。「本当に自殺しようと悩んでいる人は、逮捕や書類送検を気にする余裕はない」
 この男性によると、掲示板に書き込む若者の多くは、生きづらさを抱えながら、ネットに居場所を探している。「自殺仲間の募集から調べて、保護することが一般化すれば、本当に死にたい人は掲示板から離れ、ますます手の届かない所で行動する」と指摘する。
 ネットで自殺相手を探した経験のある男性(35)も「取り締まりより、そこに至った人たちを支えようという動きがなぜ出てこないのか」と残念がる。多くの人に支えられ立ち直った自らの体験から「警察と精神科医がチームを組むなど、止めた後のフォロー体制まで考えるべきだ」と話す。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20050611/eve_____sya_____002.shtml