総務省は5日、「インターネット上の自殺予告事案について適切かつ迅速な対応を促進する取組」について発表しました。ネット上での自殺予告や集団自殺の呼びかけについて、プロバイダ等と警察との連携を深めるための行動指針を定めたもの。
 それによると、
 (1)自殺予告事案について、緊急避難の要件を満たす場合には、通信の秘密である発信者情報を警察に対して開示することが許されることを明確化、
 (2)具体的な自殺予告事案における緊急避難の要件判断の基準及び発信者情報の開示手続
 としています。

 「ガイドライン」には、通信の秘密の侵害について、人命保護を優先することから、刑法上の緊急避難であり、違法性が阻却されると解釈されるが、「警察組織から、所定の手続に従って照会されるものであり、照会を受けたプロ バイダ等において、本ガイドラインに示す考え方や基準に沿って慎重に緊急 避難の要件を検討し、参考例に照らすなどして要件を満たすと判断した上で 発信者情報を開示した場合には、通信の秘密侵害行為につき違法性が阻却さ れる、又は故意が阻却されることが多いものと考えられる」として、警察との連携によって、違法性が阻却される可能性が高いことが示されている。
 また、対象となる自殺予告等の事案は、掲示板のみならずメールも含まれるとしている。さらに、そうした発信者情報の開示は警察以外からの通報の可能性もあるが、警察以外の発見者が110通報知ればよいとして、このガイドラインでは、警察からの照会があった場合のみを例示している。

 手続きは、[現在の危難の存在]=「発信者の自殺又は自傷行為による生命又は身体の安全に対する危険」が確認できることがまずある。ということは、自殺予告のみならず、自傷行為による生命・身体の危険が及んだとされれば、危険を認知したとみなされる。ということは、チャットなどで自傷行為をリアルタイムで公開したり、自傷行為についてブログなどで派手に書いていた等の場合もケースによって対象になるようです。
 ただし、1)発信された日時、2)発信された情報の内容、3)他の情報から得られた内容、4)日頃の言動ーなどによって危機が切迫しているかどうかを判断するという。集団自殺の呼びかけの場合は、「一緒に死にませんか」「本気で死にたい人募集」などの表現も対象となる。

 情報を開示する内容は、1)契約者情報を保有している場合(プロバイダなど)は、当該発信者の氏名、住所、電話番号、2)契約者情報を保有していない場合(電子掲示板等の管理人など)は当該発信に関するIPアドレス、メールアドレス ーとなっている。
 しかしながら、例外として、「同姓同名の場合、住所が移転している場合、要保護者を捜索 する必要がある場合等においては、要保護者を特定するため生年月日の 情報が必要な場合も考えられる」という。また、「プロバイダが提供するサービスの態様によっては、発信者を特 定するため接続に使用されたログインID等の情報が必要な場合も考え られる」としている。

 それにしても、こうした対応によって、一時的にインターネット上の自殺予告や集団自殺の呼びかけが減少する可能性はあるでしょう。しかし、こうしたガイドラインから外れたような書き込みや、そもそも、プロバイダ等4団体以外の場所でされるなど、形式が変化したり、闇にもぐったりするかもしれません。そして、メールアドレスとIPアドレスを含めた個人情報を警察が知ることになる。これが「ネット心中」を口実に、新設されようと国会で審議中の共謀罪の適用も考えられる。もし、これを口実に共謀罪が適用されるのであれば、メールでの相談も含めるのだろうか。そうであれば、そうしたメールのやりとりをしていることでかろうじて生き残っている人たちのケアをどうするのか。単なる通報システムではなく、ケアの観点が必要なのではないか。警察に特化するようなガイドラインのあり方に多少の危惧を覚える。

 
 

 インターネット上の自殺予告事案について適切かつ迅速な対応を促進する取組

 総務省では、自殺予告事案へのプロバイダ等の対応について、電気通信事業者団体及び警察庁とともに検討を進めてまいりました。
 検討の結果、社団法人電気通信事業者協会、社団法人テレコムサービス協会、社団法人日本インターネットプロバイダー協会及び社団法人日本ケーブルテレビ連盟の4団体が共同で、自殺予告事案に関し、プロバイダ等が警察から発信者情報の開示を求められた場合における開示の判断基準や手続等に関する行動指針を定めましたのでお知らせします。

1 経緯
 最近、インターネット上の電子掲示板等に自殺の決行をほのめかす書き込みや集団自殺を呼びかける書き込みがなされ、これらの自殺予告を発見した者から通報を受けた警察が、自殺を防止するため、当該書き込みをした者の氏名、住所等(以下「発信者情報」といいます。)を入手することが緊急に必要な事案(以下「自殺予告事案」といいます。)が見られます。
 総務省では、自殺予告事案への対応に関して、本年5月から、電気通信事業者団体(社団法人電気通信事業者協会、社団法人テレコムサービス協会、社団法人日本インターネットプロバイダー協会及び社団法人日本ケーブルテレビ連盟。以下「4団体」といいます。)及び警察庁とともに検討を進めてまいりました。
 その結果、4団体によって「インターネット上の自殺予告事案への対応に関するガイドライン」が策定され、自殺予告事案に関し、プロバイダ等が警察から発信者情報の開示を求められた際における情報開示の判断基準や手続等に関する行動指針が定められました。
 総務省としても、今般のガイドラインの策定及び関係者によるガイドラインの適切な運用を通じて、インターネット上の自殺予告事案への適切かつ迅速な対応がより一層促進されることを期待しています。

2 ガイドラインの主な内容
 (1)自殺予告事案について、緊急避難の要件を満たす場合には、通信の秘密である発信者情報を警察に対して開示することが許されることを明確化
 (2)具体的な自殺予告事案における緊急避難の要件判断の基準及び発信者情報の開示手続

<関係報道資料>
○インターネット上の自殺予告事案について適切かつ迅速な対応を促進する取組(平成17年8月25日)
 http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050825_4.html

連絡先 : 総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政課
    (担当:池田課長補佐、木曽専門職)
 http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/051005_4.html