プレスリリース

hatesbtetuya2005-10-27


 
『ケータイ・ネットを駆使する子ども、不安な大人』
  (渋井哲也著)
   定価:本体1600円+税


 さてこのたび、小社では標記の書を刊行することになりました。このところ、ネットを利用した犯罪や、少年事件が増えているのは確かです。特に子どもが絡んでしまう犯罪が起こった場合、ネットにその責任を求める論調が多くなっていることは確かです。しかし、ネットを取り上げてしまうことが、全ての解決にはなりません。
「インターネットの『有害サイト』を規制しよう!」、あるいは「『危険なサイト』を子どもたちに見せないようにしよう!」というムードが漂っています。それは、出会い系サイト関連事件やネット心中、ネット犯罪など報道されるたびに、「ネットがあるからいけない。子どもたちを守ろう」と漠然と考えてしまう大人たちが多いからでしょう。
 果たしてそうでしょうか。インターネットが根本的な原因であれば、これだけ普及しているのだから、もっと事件が起きてもいいはずです。たしかに、インターネットは犯罪やトラブルの「入り口」にはなっています。しかし、そうした「入り口」に接したとしても、その反応には個人差があるのです。その個人差はどこからくるのか。その主因たるネット・コミュニケーションの特性について考察したのが本書の試みなのです。
 2004年6月、長崎県佐世保市内の小学校で同級生殺害事件が起きました。その際も、「主犯」が「インターネット」という見方は強く、家裁の判決要旨でも、そうした考えは見てとれます。しかし、インターネットはあくまでも道具です。そのコミュニケーションの中になにがあったのか。しかも加害者と被害者は同級生であったことから、日常的な会話もあったはず。彼女たちの日常とインターネットとの関係はどうだったのでしょうか。
 その後、政府や行政が考えた対策は、「有害サイト対策」や「匿名の他者とのトラブル」がほとんどでした。佐世保事件は友人間のトラブルでした。友人間で起きたネット・トラブルは、そうした政策には反映されていません。そのことを考えなければ、事件が教える教訓は見えてきません。
 本書では、単なる「有害サイト規制」や「匿名の他者とのトラブル」を想定するだけでは現実に合わないとしています。真に子どもたちの現状を見つめて、インターネットの利用教育を進めて行くことを提案しています。これからのインターネット時代のために、家庭で、あるいは学校で、地域でのネット利用教育を進めていくべきではないかと考えています。
 どうぞ本書についても皆様のご好評を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

渋井哲也

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