憲法改正案発表 自民


 自民党が「新憲法草案」を発表した。
 http://www.jimin.jp/jimin/shin_kenpou/shiryou/index.html
 ちょっと見ただけでも、怪しいものがあります。 前文は法的拘束力がないとされていますが、そこには、「自らの決意に基づき」とわざわざあります。これは、現憲法が「アメリカ製」だというのを強調したいのでしょうか。「自主憲法制定」を党是として来た自民党らしいと言えば、らしいです。しかも、平和的生存権=平和のうちに生きる権利が削除されています。ただ、環境権は盛り込まれました。 ある権利を捨てて、新しい権利を盛り込むという姿勢が見て取れます。

 各条文をみてみると、あいかわらず、第1条に「象徴天皇制」を持って来ています。第一条はその国の最も重要な条文がくることが多いのですが、ここであえて天皇制がくるということは、逆に天皇制の危機を象徴したかのようなものか。

 第2章が「戦争放棄」から「安全保障」となり、9条第1項は、国際紛争を解決する手段としての武力行使、威嚇の放棄は残しました。しかし、2項の「戦力不保持」をなくし、自衛軍の明記。3項で国際協調のための出動を入れました。1項と3項が矛盾するような感じがするのは私だけ?

 12条(基本的人権)の趣旨は大筋で変っていないのですが、「責任と義務」が入りました。そもそも、憲法は国を縛る最高法規であるはず。国民の義務が強調され過ぎな気がします。これでは、国が国民を縛るという明治憲法の発想になってしまいます。14条の差別の禁止と、選挙人の資格に、障害の有無を明記したのは、これはどういう意味があってでしょうか?素直に読めば前進ですが、逆に言えば、何かの政治的なバランスによるのでしょう。また、犯罪被害者の権利が加わったのはよいと思いますが、19条の2も個人情報保護にふれています。これはメディア規制の可能性を含んでいますね。

 64条の2に「政党」に関する事項がある。政治活動に関する自由を憲法で保障するのはよいが、その政党要件を「法律」で定めるとあるのは、「憲法で保障された政党」と「憲法で保障されない政党」との区別をしようというのでしょうか。悪く考えれば、政治活動の制限をうたったものとも考えられます。

 76条3項には、軍事裁判所をつくるとされています。自衛軍を明記したのですから当然とはいえ・・・。

 96条は憲法改正手続きですが、現行の「各議院の総議員3分の2以上」から「過半数」に修正しています。これは、憲法改正を容易にするものとなります。今回の「郵政選挙」のような、二者択一が行われれば、簡単に改正されてしまう可能性を有しています。

 いろいろありますが、チェックするのも面倒な感じもしますが、民主党も含めれば改憲勢力の側からみれば、いまがまたとないチャンス。今度の総選挙が憲法改正の是非なのか、あるいはそれ以前にやってしまうのか。いずれにせよ、4年以内に憲法問題がクローズアップするでしょうね。