母親毒殺未遂少女を逮捕 2
母親毒殺未遂で逮捕された少女の日記をどう読むのか(http://d.hatena.ne.jp/hatesbtetuya/20051104)の続きです。
5)日記の書き始め
彼女のハンドルネームは「岩本亮平」であり、それはオンライン小説「絶望の世界」の主人公だということは既に書きました。日記の書き始めは、その「絶望の世界」と似ています。
彼女の日記の書き始めは、
6 月 27 日 天気 晴れ
暗黙な日々
日記を書き始めようと思います。学校の人はこの事を知らないので、嫌な事とかも全て書くつもりです。僕の友達は少ないです。教室では何時も孤 ...
とあります。以下の「絶望の世界」と
*1 天気を書いている
*2 日記を書くことの決意
*3 嫌な事も書くとの趣旨
*4 友達が少ないことの暗示
6)グレアム・ヤングについての記述
彼女は中学校の卒業文集で、尊敬する人に「グレアム・ヤング」を挙げています。しかし、ブログでヤングを取り上げたのは、7月3日のみです。
7月3日
読書
今日は本の紹介します。 グレアム・ヤング毒殺日記 尊敬する人の伝記、彼は14歳で人を殺した。酒石酸アンチモンカリウムで、毒殺した。其の薬品は僕の部屋の...
彼女はインターネットでブログを綴る以前からヤングを知っていたようですが、インターネットで補足的に彼を調べることはしたのでしょうか?私はそれほどしていないのではないか、と思っています。というのも、薬品の種類や母親の病状について淡々と書いているということは、彼女の関心ごとの中心がそれらだったからでしょう。しかし、ヤングの記述が少ないことは何を示すのか。しかもそれがたったの一回だけ。というのは、ヤングへの関心は少なくともこの時点でそれほど強くなかったのではないかと。前回の記述と矛盾した見解になっていますが・・・。
7)感情表現が少ない
彼女のブログは、事実が中心に構成された日記です。ブログを書く人の動機について、「はてなダイヤリー」のユーザーを対象にした調査があります。「人はなぜウェブ日記・ウェブログを書き続けるのか」(神戸学院大学人文学の三浦麻子氏と専修大学ネットワーク情報学部の山下清美氏による調査)によると、最も多いのが事実志向で自己志向の「備忘録型」で24.4%でした。彼女の日記のこれにあてはまるため、パターンとしてはそれほど珍しくはありません。
同世代の、しかも女性が書くブログとしては、感情表現が少ないような気がします。はっきりとした統計はないのですが、女性の書くブログは男性のブログと比べて、感情を表現するものが多いのです。しかし、彼女の日記で感情を表現した部分はほんの一部で、ほとんどは事実志向です。
(つづく)
追記
1)僕との表記について
彼女の場合は、ブログを「男」として書いていた、としましたが、週刊文春(11/17号)の同級生の証言によると、彼女は小学校のときから、「ボク」という一人称を使っていたようです。日記では「男」を装ったのは、「ボク」という一人称で語りやすかっただけとも考えられます。つまり、「男」であることは、後付けの可能性があります。一部の評論家や心理学の専門家では「性的倒錯」あるいは「乖離性同一性障害」を指摘するコメントもありますが、それは間違いではないかと思います。
6)ヤングについて
上記の週刊文春では警察関係者の証言として、彼女の部屋には、グレアム・ヤングやナチスの党大会の写真もあった、としています。写真がどのようにあったのかは不明ですが、仮にポスターのように貼られていたのではれば、意識的に関心を寄せるほどではなく、むしろ意識するほどでもなく、当たり前の存在としていた可能性もあります。このあたりは、彼女の証言があるわけではないので、なんとも言えません。いまいち、彼女のヤングに対する傾倒の程度がよくわからないのです。