死んじゃうか

 実家との話で、最近、自殺が多いという話を聞く。自殺が多くなったのか、それとも、死因が「自殺」だということが広がるようになったのか、どちらかはわからない。もともと実家の近く(およそ50m)の橋は自殺の名所だったし。



 実家の菩提寺の息子は首つり自殺。反抗期からか、息子は暴走族(言い方が古い?)に入っていたようだ。しかし、父親からすれば息子は「寺の後継ぎ」。あるとき、父親は、(詳細は不明だが)道徳的な説教をしたらしい。数日後、首をつったという。



 また、甥の同級生(?)も自殺している。遊んでいた男子高校生だったが、どうやら、「10万円の借金」を背負ったという。10万円の借金そのものよりも、その理由が重要だったらしい。「誰にも言うな」と誰かから脅されていた。その後、橋から飛び降りた。



 私が高校生だったころ、こんなに自殺の話を聞かなかったことは確かだ。しかも、この話を実家では慣れっこなのか、子どもの目の前で話をしている。

 そういえば、自殺ではなかったが、私の子どもの頃も、交通事故で亡くなった遺体を見たかどうかが近所の話題だった。というのも、実家の目の前の交差点(自殺の名所の橋からは約100m)は交通死亡事故の名所。夜中に大きな音がすれば、私も含めて、近所中が高見の見物をしていたものだ。

 それに、近所の子どもが自殺遺体を発見したことで、感謝状をもらったことも話題になっていたりした。だから、家で死の話題は幼いころからあったのだな、と思い出す。



 昨日、ある人と夜中に話をしていて、思わず、

 「死んじゃうか」

 と口から出る。あまりにも気軽に出てしまった言葉だった。 どんな文脈から出て言葉なのかはいまは記憶していない。たまたま、いつもは自分が弱音を吐いている相手が共鳴しなかったので、「一緒に死にましょう」とはならなかったが、もしそう言われていたらどうしたんだろうか。