いじめ自殺続報



いじめ自殺「ゼロ」統計、実際は少なくとも6件

 文部科学省の統計ではいじめによる児童・生徒の自殺件数がゼロとなっている1999〜2005年度に、実際にはいじめを苦にした自殺が相次いでいた疑いのあることが20日、読売新聞の調べでわかった。

 既に判明している北海道滝川市のケース以外にも、自殺した生徒へのいじめがあったと学校側が認めたケースが少なくとも6件あり、このうち2件は、遺書にいじめを受けたことが記されていた。それでも各教育委員会は「因果関係が認められない」などの理由で、文科省に報告しておらず、同省ではこうしたケースについて、改めて事実関係の確認に乗り出す方針を固めた。

 「死んだらもういじめられない」──昨年4月、山口県下関市の中学3年の女子生徒(当時15歳)が校内で自殺した。亡くなってから2か月後、自宅の机から、こう書かれたメモが見つかった。

 学校は、全校生徒や保護者へのアンケートで、女子生徒が日常的に「キモイ」と言われるなど、いじめを受けていた事実を把握し、両親に謝罪まで行った。しかし、県教委が文科省へ報告した自殺の原因は「いじめ」ではなく「友人との不和」。「いじめが自殺の要因になったか判断できない」というのが理由だった。

 女子生徒の父親(49)は「優しい子がいじめで自殺したという事実があいまいになってしまい、今も納得できない」と話す。これについて、県教委は「与えられた事実関係からは、いじめが直接の引き金かどうかはわからない」と説明する。

 99年10月、堺市の市立高校1年の女子生徒(当時16歳)は、「私をいじめた多くの方々へ おうらみします」などとする遺書を残し、自殺した。

 だが、当初学校側はいじめの存在を認めず、自殺の原因は「その他」で報告された。その後の調査で「友達のからかいが一因だった」と認めたが、文科省への訂正は行わなかった。

 文科省が公立の小中高校の児童・生徒を対象に毎年行っている調査によれば、99〜05年度までに自殺で亡くなったのは計935人。いじめによる自殺はゼロとなっている。

 これに対し、自殺の発覚後、学校などが行った調査で、自殺した生徒がいじめを受けていた事実が判明したケースは、下関市堺市のほか、少なくとも栃木県鹿沼市宇都宮市、千葉県市原市、埼玉県蕨市の4件あった。しかし、いずれも「自殺との因果関係がわからない」などの理由から、同省には「いじめによる自殺」と報告されなかった。

(2006年10月20日15時56分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061020itw5.htm





自殺原因分類見直し

来年から警察庁

 警察庁は十九日、毎年まとめている自殺統計について、来年一月から原因や動機の分類方法を大幅に見直す方針を決めた。社会情勢に合わせ、「いじめ」「借金の取り立て苦」など複数の項目を新設し、詳細なデータの公表を検討する。自殺者が八年連続で三万人を超える中、関係機関の幅広い分析や対策に有効活用してもらう考えだ。

 警察庁は一九七八年から毎年、警察が扱った全国の自殺について取りまとめている。

 原因・動機に関しては、内部的にはこれまで五十四の小項目に分類していたが、外部へは「家庭問題」「健康」「経済生活」など、八つの大項目に集約した数字だけを公表していた。本人の遺書などがなく、現場の警察官の推測を交えて判断したケースもあり、統計としての正確性を欠くと判断していたためという。

 今後はまず、現場の警察官が使う報告書の小項目を、分析や対策に役立てやすいよう見直す。例えば、従来は「その他」に分類されていた「介護・看病疲れ」「子育ての悩み」「虐待を受けた」などの項目を新設。「仕事疲れ」「借金の取り立て苦」も独立させる

 「学友との不和」としていた項目は「いじめ」と「その他」に分ける。「負債」も、「多重債務」「連帯保証債務」「その他」に細分化する。

 一方で家族形態の変化に伴い、「しゅうとめ、しゅうととの不和」「嫁との不和」は「家族関係の不和」に集約する。

 現場の警察官は、遺書や本人の言動などで原因・動機が確認できた場合のみ、データを計上。新たに整理した小項目(五十三項目)の数字は公表する方向で検討する。

 今年六月に成立した自殺対策基本法は、自殺対策の柱として「防止に向けた調査研究の推進」を盛り込んでいる。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20061019/eve_____sya_____000.shtml