漫画の性描写が「わいせつ」に当たるかどうかを争った、いわゆる「松文館」訴訟の判決公判が東京地裁であり、裁判長は、懲役一年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
 なにが「わいせつ」にあたる範囲で、その「わいせつ図画領布罪」が憲法違反かどうか、などが争点だった。
 わたしはこの判決に反対ですが、裁判長の「性表現の氾濫と過激化はインターネットの普及で強まっているが、わいせつ物を取り締まるべきとの社会的合意は確固としている」との認識は、社会の多様な意見の一部に過ぎないと思うのです。いかがでしょう?

 そもそも、わいせつ図画を手に入れようと思えば、様々な苦労をして手に入れることができます。また、インターネットではその一部ではあるでしょうが、入手が困難ではない。
それに、どのようなレベルで入手を規制すべきかは、個人の価値観が左右する問題であるでしょう。

出版社社長に有罪 「過激な性表現」 東京地裁  2004.01.13

 露骨に性描写した漫画を出版したとして、わいせつ図画頒布罪に問われた出版社「松文館」(東京都豊島区)の社長、貴志元則被告(54)に対し、東京地裁は13日、懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役1年)を言い渡した。漫画の性表現が、どこまで許されるかが初めて争われたが、中谷雄二郎裁判長は「身体が現実に近い形態で描かれ修正も弱く、過激な性表現になっており、わいせつ物に該当する」と判断した。

 弁護側は刑法175条のわいせつ罪の規定について「表現の自由を保障した憲法に違反する」と主張したが、判決は「性的秩序を守り、最小限の性道徳を維持するのが目的で、一般国民から当然のことと受け入れられている」と指摘し、従来の判例と同様に合憲と判断した。

 問題の漫画は性器や性交場面などを描写した成人向け単行本「蜜室」。弁護側は「写真やビデオほど刺激的でなく、インターネットで過激な作品があふれており、違法性はない」と無罪主張していた。

 「わいせつ」について、最高裁は57年、小説「チャタレー夫人の恋人」をめぐり、社会通念上(1)いたずらに性欲を興奮・刺激する(2)普通人の正常な性的羞恥(しゅうち)心を害する(3)善良な性的道義観念に反する??場合との定義を示した。判決はこれを踏まえ、「漫画は、性的刺激を緩和することも強くすることも可能な表現手段。本件は、修正も弱く、写真よりも読者に与える刺激の程度は大きい」と述べた。社会状況について「性表現の氾濫と過激化はインターネットの普及で強まっているが、わいせつ物を取り締まるべきとの社会的合意は確固としている」と指摘した。

 判決によると、貴志被告は02年4月、同社編集局長(44)と漫画家(35)=ともに罰金50万円が確定=と共謀、蜜室(1冊920円)約2万冊を16店に卸した。144ページのうち3分の2が性描写で18歳未満は購入できない。【渡辺暖】

毎日新聞1月13日] ( 2004-01-13-11:28 )

 資料サイト http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9018/shoubun-index.html