訃報です。
 人気作家で脚本家の野沢尚さんが自殺しました。ご冥福をお祈りします。面識はありませんが、作品の「眠れる森」や「不夜城」、「この男、凶暴につき」は好きでした。
 それにしても、人気作家が流れに乗って、売れている時期に自殺したのはなぜでしょうか。経済的なバックボーンがあっても、なにかに悩みがあったのか。クリエイターとしての悩みはいろいろ想像ができます。何を書きたいのか、どのように表現するのか。作品と自分との関係はどんなものか。商業主義とクリエイターとしての創造性との間でどこまで妥協するのか、しないのか。
 さらに、作家はフリーランスな立場。いつ売れなくなるかは保障がない。今の経済的なバックボーンがいつくずれるかはわからない。仕事や作業は一人のことが多く、孤独。などなど。このようなフリーランス的な悩みがあったのだろうか。
 それに、作家が発表するからには、視聴者、読者の反応を気にするものだ。そうした世間を気にし過ぎたのだろうか。いまのところ、自殺を明言するような遺書はあるものの、人気絶頂のこの時期に、なぜ自殺なのか。わたしは、そうした状況にないだけに、想像すらできません。

人気脚本家・野沢尚さんが自殺、広がる“なぜ?”

 一体どうして?! 作家で人気脚本家の野沢尚(ひさし)さん(44)が28日午後2時半ごろ、東京都目黒区の事務所で、首を吊って死亡しているのが見つかった。警視庁碑文谷署の調べによると、部屋の中には遺書らしきものが見つかっており、自殺とみて調べている。野沢さんは平成19年以降にNHKで放送予定のスペシャ大河ドラマ坂の上の雲」の脚本を担当するなど仕事も順調だっただけに、突然の訃報に、関係者らは「なぜ?」と声をそろえ、芸能界に衝撃が走っている。
 碑文谷署によると、野沢さんの妻が事務所を訪れたところ、応答がないため、鍵を壊して入ると野沢さんが窓の取っ手にひものようなもので首を吊っているのを発見した。27日深夜から28日未明にかけて死亡したとみられる。遺書が見つかっており、同署で調べている。
 野沢さんは遺作となった4月放送のテレビ朝日スペシャルドラマ「砦なき者」の原作・脚本を手がけたほか、今後もNHKが「21世紀スペシャ大河ドラマ」として発表した「坂の上の雲」の脚本を担当。講談社の担当者編集者によると、書き下ろし小説「群青」の執筆を間もなく始める予定で、「深みのある勝負作にしたい」と意欲を見せていたという。そのほかにもドラマや小説の仕事が続々と控えており、順調そのものだった。
 それだけに突然の悲報に、野沢さんをよく知る人々は一様に「信じられない」と声をそろえた。
 月に2回は飲んでいたという幻冬舎の斉藤順一氏(36)は「2週間前にも純愛小説の件で一緒に飲んだ。ふさぎこむようなところはあったが、死ぬほどの悩みを抱えてるようには見えなかった。ふさぎこむことは、クリエーターなので前からあったこと。乱歩賞も3度目でとったようにプレッシャーには強い人のようにみえた」と信じられない様子。「決めたことをきちんとやりとげる勤勉家だった。なんで一言相談してくれなかったのか…」と唇をかんだ。
 長年コンビを組んできたドラマ演出家の鶴橋康夫さんも「来年もTBSで連続ドラマを撮ることになっていて、7月7日に打ち合わせのために会う約束をしていた。先日も、『辛口のホームドラマを書くから』といわれたばかり。今が円熟期で順風満帆なのに、なぜ? 気が抜けた思いだ」と無念さを募らせた。
 NHKのスペシャル大河に関しては、脚本取材に時間がかかり、「18年の予定が19年かそれ以降になるかもしれない」と発表されるなど、スケジュール遅れがあった。ただ、同局スタッフが25日に野沢さんに会った際には、悩んでいる様子はなかったといい「本は15回分までの初稿が終わったところで、順調に進んでいた」という。自殺の動機は謎に包まれている。(サンケイスポーツ
[6月29日10時48分更新]

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