明日、7月から、東京都青少年保護条例によって、書店やコンビニで発売される書籍が規制されます。規制対象は、児童に有害だと思われる情報が一定の量で記載されている図書です。これまでも、成人マークや区分陳列などをしてきました。今回の改正では、有害情報が掲載されているものは、包装が義務づけられます。つまり、以前あったビニ本(ビニール包装された本)の復活です。これまでに発行されたものは、書店でビニ本にするのでしょうが、これから発行するものについては、雑誌協会の提案でシールでもよいことになっています。

 「児童に有害な情報」を排除する責務は、子どもの権利条約でも定められています。しかし、なにが有害なのか?は一人ひとりの発達段階などによって違ってきます。また、子どもはすべての情報にアクセスする権利=知る権利を、同条約で保障されています。こうした問題は、議論が東京都の一協議会の中で、ほぼ子どもには関係のないところでされてきました。自分達にとって関係のある行政施策に付いて意見を表明する権利が同条約で定められていますが、表明する機会はありませんでした。こうしたことは、「出会い系サイト規制法」のときもそうでした。

 一方、アメリカでは、ネット上のポルノ規制を定めた「児童オンライン保護法」をめぐっては、違憲判決が下されました。「児童に有害だから」という理由で、ネット上の表現を規制するのは、憲法違反だということなのです。
 アメリカは、子どもの権利条約を批准していない国です。だから、判決それ自体は、子どもの権利の枠組みで議論されたわけではありません。憲法表現の自由が争点でした。

 有害情報とは何か?性や暴力表現が有害情報なのか?そうした議論はあまりないように思う。たとえば、長崎・佐世保小6同級生殺害事件でも、バトルロワイアルが再び問題視され、DVDの発売延期が決まった。しかし、加害少女の精神鑑定も済んでおらず、なにが彼女を犯行にいたらしめたのかが分からない段階で、自粛ムード。こうしたことは、メディアが影響を与えたとの見方がされる事件が起きるたびにされる繰り返し。

 有害情報を排斥すれば、何も問題はなくなるのだろうか?人が死ぬなどの情報は、映画や漫画のみならず、一般のニュースにもありふれている。となれば、ニュースを子どもに見せるな、という極端なことも言えなくもない。しかし、そこまでは言わないのは不思議なことだ。佐世保事件の際、首にカッターを刺したのは、前日のTBSドラマの影響とされている。しかし、そうした光景はドラマのみならず、イラク日本人人質事件のときもあった。なにが犯行形態に影響を与えるのかは、なかなか言えないものがあるのではないか。そうした中での規制は、犯行形態を変えて行くだけではないのか?

 いろんな疑問がある中で、東京都の図書規制だな、と思う。

ネット上のポルノ規制は違憲〜米最高裁判決

 米最高裁は29日(米国時間)、児童オンライン保護法(Child Online Protection Act:COPA)が表現の自由を認めた憲法に違反し、無効であるとの判決を下した。5対4という僅差での判決であり、最高裁をも二分したインターネット上の表現の自由に関する論争は、インターネット上の自由が守られる形で決着した。
 今回の訴訟は、原告(上告人)がアメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union:ACLU)などが司法長官(アシュフォード)を相手取って起こしていた裁判。下級審ではしばしばCOPAを容認する判決が出ていたが、それでは決着せず、下級裁判所最高裁との間で繰り返しやり取りされるという異例の訴訟手続きが繰り返され、最高裁は、フィラデルフィア控訴裁判所(高等裁判所に該当)に対して詳細
 1998年に制定されたCOPAは、「未成年者にとって有害」と考えられるような性描写を含むサイトを規制することを目的としており、違反者には罰金(一日最高で5万ドル)、懲役(最長6カ月)等の刑が科されることになっている。ただし、今回の訴訟が係争中の期間は、適用が留保されていた。法が制定されると、クレジットカードなどでの個人特定の義務付け、違反者には刑罰を下すことが可能とされていた。しかし、最高裁は、これらのすべてが無効であると判示した。
 法が適用可能という理論は、各州法などで見られるようなポルノ雑誌の禁止法だ。米国ではほとんどの州で、駅売店などでのポルノ雑誌の販売方法が厳しく規制されている。しかし、控訴裁判所は2回にわたって同法は言論の自由を保障した米国合衆国憲法修正第1条に反するとの判示をしていた。
 米国では、議会が、児童ポルノ防止法(CPPA:Child Pornography Prevention Act)および通信品位法(Communications Decency Act :CDA)の2つの法律を制定し、ネット上のポルノに対する規制拡大を狙ったが、これまでにも最高裁によって骨抜きにされた過去がある。  今回の判決によって、ネット上の規制を行なおうとする勢力の勢いがそがれることが予想される。米国での最高裁判決は、先進国における動きにも少なからず影響が出てくることから、今後は、法律ではなく、道徳、教育、啓蒙といった形での児童保護を強化する動きが出てきそうだ。

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/06/30/3701.html