自殺未遂者の7割睡眠不足、平均5時間 厚労省調査
2005年06月30日07時54分

 自殺を企てた人の7〜8割が睡眠不足を自覚し、睡眠時間は4〜5時間にとどまっていることが、厚生労働省研究班の調査で明らかとなった。自殺企図者の多くは睡眠障害を伴ううつ状態にあるほか、睡眠不足で判断力が落ちていることが考えられる。国内の自殺者は年間3万人を超え、未遂者はその10倍と推定される。自殺の要因は複雑だが、研究班は、睡眠不足による不調を見逃さないことが予防策の一つになると指摘する。
 7月1日に宇都宮市で開かれる日本睡眠学会で発表される。
 調査は、03年8月〜04年12月の間に日本医大多摩永山病院(東京都多摩市)の高次救命救急センターに運ばれた自殺企図者347人のうち、未遂に終わり精神科医のケアを受けた311人(男性93人、女性218人)を対象に実施。初めての人135人と、複数回経験がある人176人を比べた。
 睡眠不足については、初回の人の84%、複数回の人の72%が自覚していた。睡眠導入剤精神安定剤を飲んでいた人はそれぞれ52%、89%。睡眠時間は平均4.6時間、5.7時間だった。就寝時間の平均は午前1時10分、午前2時20分で、寝付くまでにそれぞれ1時間30分、54分かかっていた。一晩に1.8〜2.4回、途中で目が覚めており、浅い眠りにつながるアルコールを2割以上が寝酒として飲んでいた。
 国立精神・神経センター武蔵病院の樋口輝彦院長によると、自殺する人の9割は何らかの心の病を持っており、うち6割はうつ病だという。「心の病は睡眠障害を伴う。睡眠不足がうつ病を引き起こすかどうか、現在、研究が進んでいる」と話す。
 研究を担当した日本医大精神神経科の伊藤敬雄講師は「自殺を企てた人のほとんどが、睡眠の質や量に問題があった。自殺未遂した人をそのまま家に帰すのではなく、精神科医のケアが必要なほか、一般の人も『たかが睡眠』と見過ごさないことが大切だ」と話している。
http://www.asahi.com/national/update/0630/TKY200506290349.html