自殺と酒

 厚生労働省の研究班の調査で、自殺と酒の関係についての報告が出ました。「週一回以上飲酒し一日当たりの飲酒量が日本酒三合以上に相当する人や、全く飲まない人の自殺リスクは、月に一−三日程度飲む人の二・三倍になる」ということです。つまり、酒量が多い人が多い人もそうですが、まったく酒を飲まない人も、自殺リスクが高いというのです。



 自殺願望者や自傷行為をする人の取材を続けてきていますが、これは私の取材実感ともあっています。取材上、大酒飲みの人もいましたが、ほとんど飲めない人も多かったことはたしかです。もちろん、適量であっても、自殺願望を持つ人はいました。でも、酒に弱いなあ、と思う人がストレスをためたときに、吐き出す手段のひとつがないのも事実です。



 よく思うんですよ。「寂しいとき、話を誰かに聞いてほしいときに、インターネットで吐き出すものよいけど、Barで吐き出すものよい」と。でも、酒を飲めない、という人にはあまり効果的ではなかったですね。



 ただ、記事によれば、研究班のコメントとして、「飲まない人の中に、自殺の危険性を高めるようなつらい病気を持つ人やうつ状態の人が多く含まれていた可能性もある」。「ただ、酒を飲めば自殺リスクを下げられるという結論が出たわけではない。アルコールの害も考えると、一日一合程度にとどめた方がいい」ともあります。こういう調査は、統計方法で変ってしまうこともありますが、一つの結果が出たことは、今後の、自殺予防活動には、プラスになることでしょうね。どのように政策との関連をつけるのかは今後の課題でしょうけど。



自殺リスク酒量影響

厚労省が調査



 飲酒と自殺の関係について男性約四万人を調査した結果、週一回以上飲酒し一日当たりの飲酒量が日本酒三合以上に相当する人や、全く飲まない人の自殺リスクは、月に一−三日程度飲む人の二・三倍になることが一日、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)の調べで分かった。

 国内の自殺者は毎年三万人を超える。習慣的な大量飲酒が要因になるのは知られていたが、全く飲まない人からも高いリスクが浮かび上がった。

 研究班は岩手、秋田、長野、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の八県内の計九保健所の各管内に住む四十−六十九歳の男性四万三千三百八十三人について、七−十年(平均八・五年)の追跡調査を実施。その間、百六十八人が自殺した。

 分析に際し全体を飲酒状況で「全く飲まない」(23・8%)、「月一−三回」(9・6%)、「週一回以上」(66・6%)の三群に分類。さらに「週一回以上」について、日本酒換算で一日当たり「一合未満」「二合未満」「三合未満」「三合以上」の四グループに分けた。

 その結果、「月一−三回」の自殺リスクを「一・〇」とすると、「一合未満」が一・二、「二合未満」が一・四、「三合未満」が一・三となり、「三合以上」が二・三と最大になった。

 一方、「全く飲まない」も二・三となり、中でも「飲んでいたがやめた」に限ると六・七と非常に高い数字が出た。

 研究班は「飲まない人の中に、自殺の危険性を高めるようなつらい病気を持つ人やうつ状態の人が多く含まれていた可能性もある」と分析。「ただ、酒を飲めば自殺リスクを下げられるという結論が出たわけではない。アルコールの害も考えると、一日一合程度にとどめた方がいい」としている。

 http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20060302/mng_____sya_____008.shtml