パブリック・コメント提出



 インターネット上の違法情報・有害情報に関する通報窓口「ホットラインセンター」の設立準備会合が開かれました。違法情報については現行法でも十分に対処可能だと思いますが、有害情報における「有害」認定の曖昧さなどが以前から疑問に思っていた私は、パブリックコメントを提出しました。



 [意見]



 1)子ども参加と委員の構成等について



 今回の対策では、子ども当事者もインターネットのユーザーであり、大きな利害関係者です。児童の権利に関する条約(以下、子どもの権利条約)では、第12条に置いて、意見表明権が掲げられています。にもかかわらず、ホットライン設立準備会委員には、子ども当事者が含まれていない。



 ホットライン設立準備会委員には、情報論や犯罪論、テクニカルな担当者、法律上の専門家はおりますが、子どもの権利や心理学、教育学に関する専門家がおりません。委員には、子どもの権利や心理学、教育学の視点から、インターネット上の違法・有害情報の問題を考えるメンバーが必要だ。



 もし、それが可能ではない場合、こうした一般の意見を求めるパブリック・コメントとは別に、専門部会(たとえば、子ども当事者が意見を継続的に述べられる場や、専門家の提言が提出できる場)が必要だ。



 2)情報アクセス権の重要性



 こうした子どもの権利に関する事項を議論する場合、第17条のeにおける、有害情報からの保護も大切ではあるが、表現の自由を考慮し、かつ、多様な情報へのアクセス権に考慮せねばならず、有害情報からの保護のみが優越的に考えられてはいけない。



インターネット上の違法情報は、現行法に従えば、ホットラインにおいて通報制度を設ければよく、違法の判断が明らかな場合は効果的である。しかし、有害情報の場合、何が「有害」なのか、誰にとって「有害」なのかは明確ではない。



 「インターネット上の少年に有害なコンテンツ研究会」報告書でも、1)一般に有害と考えられるが、内容や受信者の属性、地域によって有害の捉え方が異なる、2)それ自体は有害ではないが、使い方によって有害となりえる、3)中立的な立場からコンテンツを提供しているが、受信者の属性や捉え方によって有害となりえるーとあり、「有害」を規定しにくい。



 「有害」の判断が下される場合、多くの都道府県での青少年育成条例でも、「有害」の根拠となる判断のプロセスは開示されることはない。ホットライン等において、「有害」と判断することがあるのなら、その根拠や議論の過程も開示すべき。



 そのため、有害での判断プロセスにおいて、表現者やサイト設置者、ユーザー等の当事者の反論の機会を設けるべき。





 [まとめ]

 インターネット上の違法・有害情報に関して、それに対処する取り組みに関して、日頃から対策を考えていることに敬意を表します。たしかに、なんらかの対応が迫られていることは、インターネットを通じた犯罪等の発生状況を考えれば、当然ではあるでしょう。しかしながら、取り締まり強化を中心とする方策には慎重とすべきであると考えます。





 [提案]



 違法情報に関しては、現行法の取り締まり体制を強化すればよいと思われる。しかし、有害情報に関しては、ユーザーの個別的な事情が大きいと思われる。そのため、公的機関が一律的、画一的に「有害情報」を規定すべきではない。



 むしろ、ユーザー自身が、何が「見たくない」のかを、また、ユーザーの保護者等が「見せたくない」のかを、考えられるよな、ユーザーへのリテラシー教育をする機会を拡大すべきだと考える。



 その際、単に、情報それ自体の善悪ではなく、情報がいかにつくられるか、その情報の信憑性、情報の活かし方を含めた情報教育を積極的にすべきではないか。