思い出した最終打席

人生という名の列車(初回限定盤)

人生という名の列車(初回限定盤)





 このCDを聴いていると、あのときを思い出す。

 最終回2アウト。最後の打席に向かう私。

 実は、その前の試合終了後、ホームを挟んで両チームが挨拶をするとき、私は味方の後輩の足を踏み、その踏みどころが悪く、足を骨折していた(当時は、骨折しているとは思っていなかったが)。

 そのため、その試合には勝ったが、次の試合には出場できないでいた。しかし、中学校最後の試合。監督に代打を申し出た。監督は温情だったのか、代打を許可した。

 スコアは2−0。

 負けている。しかも、それまではノーヒットノーランで、味方は一人のランナーも出していない。その前の大会で準優勝した我々だったが、その日は、あとアウトカウント「1」を残すだけになっていた。

 その残り「1」が私になるかどうか。

 カウント1−1。私の好きなアウトコースやや高めだった。

 タイミングはばっちり。

 しかし、骨折している右足にうまく体重がのせられず、スイングが十分ではない。球威におされ、一塁線にファウルボール。

 おそらくその試合を見ていた人たちにとっては、なにげないファウル。しかし、私にとっては、そのファウルによって、体重を乗せられないことに気がつく打球だった。

 私は焦っていた。もし私が出なければ、中学最後の試合で、ノーヒット・ノーランで負けになる。内野安打は不可能。ライト前のヒット性の打球でさえ、十分に走れないために、アウトになる可能性がある。最低、レフト前のヒットくらいが必要な場面だった。

 足の様子からみて、フルスイングもあと1回しかできないだろうと私は思った。ピッチャー心理からすれば、ノーヒット・ノーランをしたいはずだし、はやく試合を終わらせたいはずだ。

 カウントは2−1。私なら2−2にしはしたくない。しかし、ピッチャーの調子は最高だ。どうすべきか。いろいろ考えているうちに、投球がされる。

 真ん中やや高めのストライク。

 そう見えた。私はフルスイングを選択した。

 しかし、ボールは無惨にもキャッチャーミットへ。

 試合終了。

 中学最後の公式試合は、ノーヒット・ノーランの負けだった。



 このアルバムを視聴していて、思い出した。

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