hatesbtetuya2004-07-27

 吉野斉(よしの・いつき)さんの著書『レクイエム』(双風舎)がようやく発売となった。この本は、解離性同一性障害(多重人格)の診断を受けた本人の自伝だ。もともとは吉野さんは私が取材していたのだが、「自分で書いてみたい」と言っていたし、本人がライター業をしていたこともあり、「じゃあ、書いてみて」と言ったところから、執筆作業が始まった。自伝は難しいのですが、「書きたい」人は何人もいる。しかし、実際に書いてきた人はほとんどいない。書いたとしても、「生きづらさ」を背負った人は特に、過去を夫簿い出すためにフラッシュバックがある可能性がある。そうしたネガティヴな反応があっても、自伝を書きたいという衝動がなければ、こうした自伝は書けない。ましてや、幼児虐待、家庭崩壊、いじめの背景がありつつ、アルコール依存、セックス依存、自殺未遂などのアクティングアウトがあった。そして解離性同一性障害。過去を意図的に振り返るには辛い作業だったことだろう。それでも書きたいと思った吉野さんを私は応援しました。支えたといえば、大げさかもしれません。

 こうして出来上がった原稿。読んでみて、出版の可能性が見えてきていたので、いくつかの出版社をあたりました。私が営業をしたわけですが、そこで、某社に決まりかけました。途中まではその出版社で出すという話でしたが、諸事情により、出せなくなりました。そこで再び営業開始。ちょうどそのころ、拙著「チャット依存症候群」(教育史料出版会)の担当編集者が独立したので、引き合わせたところ、出版することが決まりました。出来上がった本をみて、若干、加筆がされましたし、表紙には漫画家の内田春菊さんのイラストがついています。このへんの感性は、「The 編集者」という感じです。

 ちなみに、この本は、著者の吉野さんが歌手をしていて、ファースト・ミニアルバム「BELLHOUR」と同時発売です。関連づけがされた部分もあり、楽しめるかと思います。
彼女の公式サイトもありますので、御覧ください。